クリニックの新規開院を考える際、「札幌」という都市は少し独特な性格を持っています。
人口規模だけを見れば地方都市の中でも大きく、医療需要も安定している一方で、
本州の都市や他の地方中核都市とは考え方を変えるべきポイントがいくつもあります。
本コラムでは、札幌で新規開院する際に知っておきたい「他地域との違い」を整理します。
1. 人口は多いが「一極集中型」
札幌市は北海道全体の人口の約4割が集中する、典型的な一極集中都市です。
そのため、
- 札幌市内:医療機関数・競合ともに多い
- 札幌市外:医療資源が限られ、札幌への通院依存が高い
という構造があります。
特に中央区・北区・東区・白石区などは医療機関が密集しやすく、
「人口が多い=競合が少ない」ではない点に注意が必要です。
2. 冬の気候が“立地条件”に直結する
札幌開院で最も特徴的なのが、積雪・寒冷という気候条件です。
他地域では軽視されがちな要素が、札幌では重要になります。
- 駅・バス停からの距離
- 屋内導線(地下歩行空間、商業施設直結など)
- 駐車場の有無・除雪体制
特に高齢者・小児・慢性疾患の患者にとって、
「冬でも通えるかどうか」は来院継続に大きく影響します。
冬の通院を想定しない立地は、札幌ではリスクになりやすいと言えます。
3. 医療モール・ビル診療の比率が高い
札幌市内では、
- 医療モール
- 商業施設内クリニック
- テナントビル診療
といった形態が比較的多く見られます。
これは、
- 冬季の通院しやすさ
- 駐車場・公共交通の利便性
- 雪害リスクの低減
といった点が評価されやすいためです。
一方で、
- 賃料・共益費が高め
- 診療圏が限定されやすい
という側面もあり、「入りやすさ」と「経営自由度」のバランスが重要になります。
4. 患者の“かかりつけ志向”が比較的強い
札幌では、
- 長年同じ医院に通う
- 家族ぐるみで同じクリニックを利用する
といったかかりつけ志向が比較的強い傾向があります。
そのため新規開院では、
- 明確な診療コンセプト
- 既存医院との違い
- 丁寧な初期対応
がないと、患者さんに選ばれにくい側面もあります。
「新しいから来る」よりも、
**「理由があるから選ばれる」**ことが重要な地域性です。
5. 医師・医療人材は集まりやすいが、競争も激しい
札幌は北海道内では医師・医療スタッフが集まりやすい都市です。
大学病院・基幹病院も多く、人材確保の面では地方部より有利です。
ただしその分、
- 開業医同士の競争
- 専門性の差別化
もはっきりと表れます。
「どの診療科でも一定数の需要がある」反面、
中途半端なポジションでは埋もれやすいという側面もあります。
6. 広告・集患は“地域密着型”が効きやすい
首都圏と比べると、札幌では
- Web広告
- 大規模マーケティング
だけでなく、
- 地域内での認知
- 口コミ
- 近隣施設との関係性
といったローカル要素が比較的強く影響します。
開院初期から、
- 周辺住民を意識した情報発信
- 地域特性に合わせた診療時間・対応
を設計することが、長期安定につながりやすい地域です。
まとめ:札幌開院は「都市型」と「地方型」の両面を持つ
札幌での新規開院は、
- 人口規模・医療需要は都市型
- 気候・通院行動・地域性は地方型
という二面性を持っています。
そのため、
・立地選び
・診療コンセプト
・通いやすさへの配慮
を他地域と同じ感覚で進めると、ズレが生じやすくなります。
札幌で成功する新規開院には、
「札幌ならではの生活・気候・患者行動」を前提にした設計が不可欠です。