「良い開業物件」と「危ない開業物件」の違い

― 家賃だけでは判断できない7つのポイント ―

クリニック開業を考える際、非常に重要になるのが「物件選び」です。

「駅から近い」「家賃が安い」「新築できれい」「人口が多い」。

もちろん、どれも大切な条件です。しかし、これらだけで開業物件を決めてしまうのはおすすめできません。

クリニックは一度開業すると、簡単に移転することができません。だからこそ、開業時の物件選びでは「今の条件」だけでなく、開業後5年、10年を見据えて判断することが重要です。

今回は、クリニックの開業物件を検討する際に確認しておきたい7つのポイントをご紹介します。

1.「人口が多い=患者さんが多い」とは限らない

診療圏調査では、周辺人口は重要な指標です。

しかし、単純に人口が多ければ良いわけではありません。

例えば小児科であれば子育て世帯、整形外科であれば高齢者人口など、診療科によって重要となる人口構成は異なります。

さらに周辺に同じ診療科のクリニックが何軒あるのか、そのクリニックがどの程度患者さんを集めているのかまで確認する必要があります。

**「人口」ではなく「自院の診療科に合った患者層がどれくらいいるか」**を見ることが重要です。

2.競合クリニックは「数」だけで判断しない

「近くに同じ診療科があるから、この場所はやめよう」

そう考えてしまいがちですが、競合があること自体が必ずしもマイナスとは限りません。

重要なのは、競合医院の診療内容や診療時間、医師の年齢、専門分野、患者層などです。

同じ「内科」でも、糖尿病を中心とするクリニックと消化器内科を中心とするクリニックでは患者層が異なります。

競合医院の存在だけではなく、自院が地域の中でどのようなポジションを取れるのかまで考えてみましょう。

3.車から「見える」と「入りやすい」は別問題

郊外型クリニックでは、駐車場の台数や道路からの視認性が重要です。

ただし、道路から看板がよく見えていても、中央分離帯などによって反対車線から入れなかったり、交差点との位置関係によって駐車場へ入りにくかったりするケースがあります。

患者さんの立場になって、

「見つけやすいか」
「入りやすいか」
「出やすいか」

まで実際に現地で確認することをおすすめします。

特に積雪地域では、冬季の道路状況や駐車場、歩行経路まで確認しておくことが大切です。

4.「駅徒歩○分」だけでは分からない患者動線

駅前物件でも注意が必要です。

同じ「駅徒歩3分」でも、実際の人の流れから外れている物件と、スーパーや商業施設などへの生活動線上にある物件では大きな違いがあります。

Googleマップや資料だけで判断せず、実際に現地を歩いてみることも大切です。

できれば平日・休日、午前・夕方など時間帯を変えて確認すると、その地域の特徴が見えてきます。

5.医療モールは「何科と一緒になるか」が重要

医療モールには、認知を得やすいことや、患者さんにとって複数科を受診しやすいことなど、単独開業とは異なるメリットがあります。

ただし、単にクリニックが複数集まれば良いというわけではありません。

例えば、

内科 × 整形外科
内科 × 皮膚科
小児科 × 耳鼻咽喉科

など、診療科同士の相性によって患者さんの利便性は変わります。

また、調剤薬局や駐車場、エレベーターなどを含め、患者さんが受診して帰宅するまでの動線全体を考えることが重要です。

6.「家賃が安い」には理由があるかもしれない

開業時には内装工事、医療機器、電子カルテ、採用など多くの費用がかかるため、家賃を抑えたいと考えるのは当然です。

しかし、家賃だけで物件を比較するのは注意が必要です。

例えば、

・視認性が低い
・駐車場が不足している
・医療用途に必要な設備工事が難しい
・看板を十分に設置できない
・患者さんの生活動線から外れている

などの理由が隠れている場合があります。

逆に、多少家賃が高くても、患者さんがアクセスしやすく長期間安定して診療できる物件であれば、結果として合理的な選択になることもあります。

7.「今」だけでなく5年後・10年後を見る

最後に確認したいのが、その地域の将来性です。

現在の人口だけではなく、

・人口構成はどう変化するのか
・住宅開発の予定はあるのか
・周辺に大型施設の建設計画はないか
・近隣医療機関の状況はどうか
・交通環境は変化しないか

といった中長期的な視点も重要になります。

クリニック経営は長期間続きます。

だからこそ、現在の診療圏だけではなく、**「この場所で10年後も診療を続けられるか」**という視点を持って物件を検討することが大切です。

物件探しは「開業すると決めてから」でなくても構いません

「まだ具体的な開業時期は決まっていない」

「いつかは開業したいが、何から始めればいいか分からない」

そのような段階でも、候補エリアや物件を見ておくことには意味があります。

実際の物件を見ることで、必要な面積や駐車場、家賃相場、開業資金などが具体的にイメージできるようになるからです。

私たちはクリニック開業を検討されている先生方に対し、単なる空きテナントのご紹介ではなく、診療科、診療圏、競合医療機関、患者動線、周辺環境などを踏まえた物件選びをお手伝いしています。

まずは情報収集の一環として、お気軽にご相談ください。

「まだ開業するか決めていない」という先生も歓迎しております。

伊藤 大輔

伊藤 大輔 (株式会社メディプラン 医療連携部)

株式会社メディプランにて医院開業、医院継承をサポート。豊富な経験を活かし、開業を検討している医師、医院承継案件を行っています。