クリニック開業を考える際、「居抜き物件」という言葉に、
どこかネガティブな印象を持つ医師も少なくありません。
- 前の医院の名残が気になる
- 古いイメージが払拭できない
- 本当に大丈夫なのか不安
一方で近年、あえて居抜きを選ぶ医師が増えているのも事実です。
それは妥協ではなく、戦略的な選択として居抜きを評価する動きが広がっているからです。
本コラムでは、「居抜き」という選択肢の本質と、向き・不向きを整理します。
居抜き物件とは何か
居抜き物件とは、
前テナント(多くはクリニック)の内装・設備を活かした状態で引き継ぐ物件を指します。
具体的には、
- 診察室・待合の区画
- 給排水・電気容量
- 医療機器の一部
などが残っているケースが多く、
ゼロからつくるスケルトン開業とは大きく性質が異なります。
居抜きを選ぶメリット
1. 初期投資を大きく抑えられる
最大のメリットは、開業コストの削減です。
- 内装工事費
- 設備工事
- 工期に伴う家賃負担
これらを抑えられることで、
開業時の資金計画に余裕が生まれます。
特に近年は、建築費・資材費の高騰により、
居抜きの価値は以前より高まっています。
2. 開院までのスピードが早い
内装や設備が整っている分、
- 工事期間が短い
- 許認可の準備が進めやすい
といった点から、早期開院が可能になります。
これは、
- 承継案件
- 退去後すぐに後継が必要なケース
などでは、大きな強みとなります。
3. その場所に「通院動線」がすでにある
以前もクリニックだった場合、
- 患者が通っていた導線
- 「ここに医院がある」という認知
が、地域に残っていることがあります。
これは新規開業では得にくい、
見えない資産と言えるでしょう。
居抜きのデメリット・注意点
1. 理想のレイアウトを実現しにくい
居抜き物件では、
- 診察室の位置
- 動線
- 部屋の広さ
が、すでに決まっているケースが多くあります。
そのため、
「自分の理想の診療スタイルに合うか」
を慎重に見極める必要があります。
2. 見えない老朽化リスク
表面はきれいでも、
- 配管
- 電気容量
- 空調
といった部分に、将来的な更新コストが潜んでいることがあります。
居抜きでは、
専門家による事前チェックが必須です。
3. 前医院のイメージを引きずる可能性
地域によっては、
- 前院長の評判
- 閉院理由
が、今も記憶されている場合があります。
そのため、
- 医院名
- 内装の一部刷新
- 開院時の丁寧な周知
など、イメージ切り替えの工夫が重要になります。
居抜きが向いている医師・向いていない医師
居抜きが向いているケース
- 初期投資を抑えたい
- 早期に開院したい
- 柔軟に既存環境へ適応できる
- 承継・後継案件を検討している
居抜きが向いていないケース
- レイアウトやデザインに強いこだわりがある
- 最新設備を一から導入したい
- 完全に新しいブランドをつくりたい
居抜きは、万人向けの正解ではありません。
だからこそ、自分の優先順位を明確にすることが重要です。
まとめ:「居抜き」は妥協ではなく戦略
居抜き物件は、
- コスト
- スピード
- 現実性
という点で、非常に合理的な選択肢です。
一方で、
理想の医療・診療スタイルとの相性を見誤ると、
後悔につながる可能性もあります。
大切なのは、
「きれいかどうか」ではなく
「この環境で、自分の医療が実現できるか」
居抜きは、条件が合えば
最短距離で開業を成功に近づける選択肢になり得ます。